座・キューピーマジック
6-Oct-2006 19:30-21:00
駅前劇場

妻と死に別れた初老の小説家。突然の喪失感に男はうろたえ戸惑います。
3人の娘たちは父親のことがとても心配ですが、やがて、それぞれに彼のもとを旅立っていきます。
平凡な家庭の平凡な人々の日常を、水彩画でスケッチするように書き綴った物語。
とある夏の日。父親の様子を見に来た長女が帰るシーンから始まります。一人部屋に残った父親は、亡くなった妻に話しかけます...
物語は妻が亡くなった2年前の夏の日に遡ります。
すでに結婚をして家を出てはいるが、頻繁に訪ねてくる長女。
家を出て、盲目の恋人と暮らしはじめる次女。
高校卒業後の進路に悩む三女との担任の女教師。
フランス帰りで居候中の、小説家の姉。
亡くなった妻の妹たち。
なじみの編集者。
ご近所に住む銀座のホステス。
柔道2段のお手伝いさん。
妻が亡くなってから、かえってにぎやかになった小説家の家。
やがて春になります。皆が集まりテラスでお花見。しかしそれは送別会でもあったのでした。
自分の家を見つけ引っ越してゆく居候の姉、自分のやりたいことを探すため一人暮らしを始める三女、結婚で田舎へ戻るお手伝いさん。小説家は本当に一人になります。
...そして冒頭の夏の日のシーンに戻ります。
そんなわけで冒頭と最後のシーンは全く同じなのだけれど、長女の「じゃあね、おじいちゃん」というセリフで、冒頭のシーンでは単なるサヨナラの挨拶にしか聞こえなかったのに、最後のシーンでは、それまであまり描かれていなかった長女の生活が、そこで一気に見えてくるかのようで、なかなか秀逸なサゲでした。
昔懐かしい黒電話が登場していたので、おそらく昭和後半の時代設定だと思うのですが、ゆったりまったりとした時間の流れが心地よろしゅうございました。
こちらの劇団は、前回の「ルームメイト」に続き2回目なのですが、毎度セットが見事。開演前のヒマな時間は、セットを眺めていると飽きません。今回は小説家の書斎兼居間。「誰もが自然に集まってきてしまう居心地のよい場所」という設定だからなおさらなのでしょうが、本気で「暮らしてみてぇ」と思える部屋でした。細かい話ですが、テラスの土台の柱の根元に、ちゃんと雑草が生えてるあたり、こだわりを感じました。
個々の役者さんが抜群に上手いわけではなく、逆に素人っぽい感じすらするのですが、そのせいか、近所のご家庭のドキュメントを見ているような妙なリアル感があります。そういう普通っぽさにこだわった演出意図のようです。(いかにも「素人っぽく」見せるというのは、実はすげー上手いっていうことかな)
印象に残った役者さんBest3
神野恵子さん
長女役。おそらく鼻でせせら笑う演技をさせたら日本一じゃないかと。低めの声も聞き心地よいです。この人が出演してるんだったらその芝居見てみようかなと思わせる女優さんです。コメディやらせても光るんじゃないかな。見てみてえな。
小松ぴろこさん
編集者役。年取ったら角替和枝みたくなりそうだなあと見るたびに感じます。
谷口日麻さん
ご近所在住の銀座のホステス役。普通っぽさで言えば、いちばん普通っぽかった。ホステスの営業的なしゃべり方が妙にリアルでした。本物の方かと思いました(笑)
お花見のシーン、客席側を桜の花に見立て、出演者全員で桜を眺めるのですが、セリフも無しにただ桜を眺めるだけ。役者さんに思いっきり見られてるようで緊張しますた(笑)
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