劇団桟敷童子「軍鶏307」
劇団桟敷童子
25-May-2007 19:30~21:30
戦時中。息子が召集されないよう、あらゆる手を使う母親。非国民の扱いを受け、息子は戦地に送られ、やがて戦死。
そして戦後、引揚援護局指定病院"能嶋病院"。暴行され妊娠した女性の堕胎手術(当時は違法行為)が行われている。先の母親も患者のひとりで"メンドリさん"と呼ばれている。息子の死後、精神を病み、意識は戦時中で時が止まったまま。
あるとき、メンドリさんは占領軍のアメリカ将校に暴行を働く。米軍との闇取引で儲けている地元のヤクザが、彼女を差し出せと、病院にやってくる。食うためにヤクザの元で働いている復員兵の心は、ヤクザへの義理と、病院の者達への人情の間でゆれうごく。
芝居自体はフィクションでも、実際に、このような病院はあったわけで、やりきれないものがあります。
参考:戦後…博多港引き揚げ者らの体験
メンドリさんは、復員兵でヤクザの手下の一人"雷吉"を、戦地から戻ってきた息子だと思って、彼を守ろうとします。ヤクザ同士の抗争に巻き込まれた雷吉を救うため、メンドリさんは竹槍をもって飛び出していく...
メンドリさん(鈴木めぐみ)の、息子を死なせたない(人を殺させたくない)という叫びが、こちらの心に洪水のように流れ込んでくる。何の飾りもなく、みっともないくらいあからさまな純粋な叫びだからなのでしょう。なんだか泣けたです。
クライマックスで、メンドリさんが竹槍(物干し竿)をもって突進してくるシーンは、倉庫の広さをうまく生かした演出・照明で印象に残った。(ラストの大仕掛けよりも、好きなシーンだなあ)
元従軍看護婦の桜(板垣桃子)、文字通りの白衣の天使。患者を守ろうと物干し竿でヤクザに立ち向かい啖呵を切るくだり。この叫びも、やはり純粋な心の叫び。"純粋さ"には、世俗の垢で汚れた心では勝てない"絶対的な強さ"があるのだなあ。
生きるためには、良くないとわかっていてもせざるを得ない時代で、楢崎組の娘・楢崎照子(中井理恵)だけは決して自分の手を汚すことはなく、戦争でキズを負った人間のことなど、まるで他人事。現代の若者の姿を暗示しているかのようで、これは恐いな。
舞台の上はひたすら熱く、そのせいか、観ていて自然にコブシに力が入ります。幕となっても、しばらく放心状態で立ち上がる気も、アンケート書く気もせず。
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