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December 18, 2007

劇団、本谷有希子「偏路」

劇団、本谷有希子
16-Dec-2007 14:00-16:10 1F-N-10
紀伊国屋ホール

Corich公演情報

071216a

 田舎の平凡な家庭...ではあるけれど、どこか偏った者ばかり。若月も、父親も然り。人間なんて大なり小なり偏っているのがあたりまえで、紺野家も若月からみれば"グロテスク"だけれど、それが紺野家ではあたりまえのこと。
 生き方だって、毎年お遍路に出る父親、詩人めざして挫折した長男、国籍目当ての外国人夫をもつ叔母など、相当偏ってる。
 そーなると「ニュートラルなものはどこにあるの?」ってことになるのだけれど、「そんなもんあるわけないじゃん♪これがフツーじゃん」というのが本谷さんの見解なのでしょう。

 偏った人間がニュートラル(常識とかモラルとか...)なものを目指したり、戦ったり、拒んだり、足掻いたり...という構図のドラマはよくありますが、偏った姿こそが人間のニュートラルの状態と捉え、面白おかしく人間の本質を描こうとする姿勢は、とっても落語っぽいなと思います。

 そこで思い浮かぶのが柳家喬太郎の新作落語で、描く世界やキャラに、同じ匂いを感じます。

 都落ちした若月を迎える能天気にもみえる親戚は「すみれ荘201号」の実家の母親と代議士のセンセーのようだし、紺野家の人間の仮面を剥がそうと暴れる若月の父は「本当のことをいうと」(息子の婚約者の家庭状況にあわせ、弟をシンナー中毒、妹に売春させる父親を彷彿させます。ぶっとび具合は「諜報員メアリー」か。「都落ち」といえば「華麗なる憂鬱」という話もありました。

 落語っぽいといえば、依子の一言で、若月の決意が一瞬にしてリセットされるくだり、まるで落語のオチですが、ちょっとしたことで長年の苦労が水泡に帰すなんてよくあることだったりしますね。
 ばかばかしくてくだらなくて笑ってしまうけれど、そこに本質が隠れていたりするところも、落語っぽいと感じさせる要因なのでしょう。

 逆に「演劇だよなあ」と感じるのは、観客の想像力に頼る落語と違い、ビジュアルで見せざるを得ない演劇では、父が暴れる場面や若月が爆発する場面は生々しすぎて笑いとばせないところでしょうか。

 有料パンフのなかで自らを"文科系女子"と称していますが、本谷さん風"文科系女子"の方って、結構寄席や落語会で結構見かけます。なんていうか池袋演芸場の3列目の端席あたりに座っていそうな感じなですよね。

 前半のほのぼのゆったりした展開に、幾度か睡魔が襲ってきました(日曜午後のそこそこ温かい劇場ということもあるかもしれません)。自分は「腑抜け~(再演)」以降を見ていますが、共通して、最初は断片のみが提示され次第に全貌があきらかになる展開がとてもスリリングだと感じていました。今回の「偏路」、その展開は過去作品と同じなのに、スリリングどころか"ほのぼのまったり"と180度異なる印象を受けました。
 都落ちしてきた若月から見れば、ひどく退屈な"田舎の日常風景"でしょうから、観終わってみれば、観客に"田舎の退屈さ"を共有させるのが狙いだったのかなとも思いました。
 あるいは、この"ほのぼのまったり"感、本谷さん言うところの「本谷有希子第三期」「"悪意を描"くから"善意を描く"へ」の変化の表れのひとつなのかもれません。
 
 本谷さん、いつの日か、落語の台本書いてくれないでしょうか?


 舞台セットは、明るくデコレートされた部屋の壁が、上にゆくとめくれて中の骨組みが見えるようなっています。
若月言うところの、"ほのぼの"の中のグロテスクをあらわしているのでしょうね。

 印象にのこった、どうでもよいかもしれない点

・キティちゃんからドクロまで、和江の衣装のアップリケ各種
・知未がレンジでチンしてたべてたごはん
・犬の名前が「クリムゾン」
・父が娘を「さん」付で呼んでいた。先代古今亭今輔が、弟子を「さん」付で呼んでいたというエピソードを思い出した。
・小島よしおネタあり。大劇場から小劇場まで。最近いろんなところでネタに使われてるなあ。面白いかどうかは別にして、一般常識として「エンタの神様」は見ておけってことか。

木多宗生 近藤芳正
木多若月 馬渕英俚可
紺野和江 池谷のぶえ
紺野ノリユキ 加藤啓
紺野知未 江口のりこ
依子・カーン 吉本菜穂子
 
作・演出 本谷有希子
美術 中根聡子
照明 倉本康史(APS)
音響 藤本純子(Sound Busters)
音楽監修 秋山多恵子
衣裳 鈴木美和子
ヘアメイク 奥野展子
映像 奥秀太郎
演出助手 福本朝子
舞台監督 宇野圭一+至福団
宣伝美術 佐々木暁
宣伝写真 引地信彦
宣伝ヘアメイク 二宮ミハル
WEB制作 関谷耕一
票券 脇本好美(ヴィレッヂ)
当日運営 皆川小百合
制作助手 嶋口春香
制作 寺本真美(ヴィレッヂ)
企画・製作 劇団、本谷有希子

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