ポツドール
13-Apr-2008 15:10~17:40 1F-B-19
本多劇場
Corich公演情報

千秋楽。座布団席も立ち見も出て超満員でした。
顔(見た目)の良し悪しに翻弄され右往左往する4組の男女の物語。
ブスとブ男、顔に火傷を負った女性と火傷させた張本人の男、顔に大きな痣を持つ男と美人だが性悪女、美人だが欲求不満の妻と不細工と浮気している旦那。
誰もが、幼い頃は「人間は見た目ではありません、中身です」と教えられ、やがてそれが単なる絵空事・理想論であること知るわけで、この顔(見た目)と中身(心)の関係は関しては永遠のテーマですよね。民話・童話で昔から語られています。見た目は悪いが心が清らかだったり、逆に見た目で判断したがゆえに大失敗したり...
さて、「顔よ」で迎えた結末は、かなり壮絶。
久美は、贖罪から自分とつきあいはじめた(火傷させた張本人である)男が、久美のキズが治ると知り自分から去っていこうとすると、今度は男の顔をキズだらけにしてしまう。醜さ故に得ていたものが失われてしまう怖さと、だったら相手を傷つけようとうる残酷さ。
人妻の智子は、夫のような顔では満足できないという欲求不満のあまり、最後にはストーカーだったアパートの2Fの男のもとへ走り抱かれます。
壮絶ではあるけれど、カタルシスあり(爽快感とちょっぴりの涙)。
それは、いままで抑圧されてきた意識が解放されて結果の行動だから、その行動がどうであれ"解放"された姿が爽快に感じられると思うのです。逃れられない「業」を受け入れた姿は、ある意味とても人間らしい姿であるけれど、普段われわれは社会規範だのかんのと言いつつ理性で必死に「業」なるものを押さえ込み、結果ストレスを溜め込んでいるんじゃないでしょうか。
雨のシーンの智子は「業」を受け入れ「業」のままに行動していると思うのです。
前作の「激情(再演)」も壮絶なラストでしたが、「激情」は逃れられない負のスパイラルを落ちていった挙句の壮絶な結末でしかなく、爽快の微塵も無い、実にイヤーな後味の悪ーいラストでした。
さて、このあとにくる「すべては、実は醜女であった智子の妄想であった。」という妄想オチ。
妄想となると、いままで異様なまでに登場人物が顔(見た目)にこだわっていたのもが、智子の顔に対する執着からくるものだと、腑に落ちますね。
単なる夢オチは、最低のオチだったたりしますが、今回のオチは、有り無しで180度ニュアンスが異なるように思います(180度変わるあたりは「未来世紀ブラジル」みたいですね)
雨のラストシーンまでなら、「不細工でも美人でもやっぱり顔で悩むんだなあ。どっちが良いのか単純には決められないかもなあ」などと思っていたかもしれない。しかしすべてが醜女の妄想だとすると、美人になりたい願望と美人への恨みや嫉妬が混ざった情念が見えてきて恐ろしささえ感じる。
また、「客席=現実、舞台=虚構」だったものが、ラストのオチの瞬間、舞台上に「智子の妄想=虚構、智子の現実」があらわれ、智子の現実と客席の現実がシンクロしたように感じました。
「いままで見ていたのは実は智子の妄想だったんだよ。おまえらだって智子とおんなじなんだよ」
と、つきつけられたような気がしました。ちょっと被害妄想が入ってるかもしれないが、これが一番の衝撃でした。
摸写はリアルだし場面は壮絶だけれど、あまりにテーマが普遍なせいか、はたまた雨のシーンの爽快感のせいか、大人のためのおとぎ話、ちょっとダークなファンタジーって捉え方もできるのじゃないかしらん。
その他、雑感
智子と旦那とストーカー男はエリザベートみたい。
欲求不満の妻・智子はシシィ、妻を満足させられず外では浮気の旦那はフランツ。智子シシィを誘う、黄泉ならぬエロの国の帝王トート閣下(笑)
久美とその男は、スチュワーデス物語のマリコと村沢っぽい。
「親しき仲にも礼儀あり」は名言だと思ふ(笑)
「主観」と「客観」のくだりは大笑いだけれど、深いテーマだ。自分の彼女彼氏を果たして客観的に見られるのか?
ブス役の白神美央さん、前作・前々作ではブス化粧ベタベタでしたが、今回は素に近いメイク。意外にかわいらしい顔していたのでびっくり。他の女優さんが客観的美人群なので、ブスポジションは揺るがないのですね(泣)
なんだかんだ言って、ケーシー高峰って偉大だと思う。
今井裕一 | 米村亮太朗 |
橋本智子 | 内田慈 |
田村 | 古沢裕介 |
裕子 | 白神美央 |
浩二 | 井上幸太郎 |
隆司 | 脇坂圭一郎 |
里美 | 安藤聖 |
上村 | 岩瀬亮 |
久美 | 松本翔子(チェルフィッチュ) |
小野 | 横山宗和 |
山本 | 後藤剛範(害獣芝居) |
絵里 | 片倉わき |
香織 | 新田めぐみ |
女 | 梶野晴香(国分寺大人倶楽部) |
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脚本・演出 | 三浦大輔 |
照明 | 伊藤孝(ART CORE design) |
音響 | 中村嘉宏 |
舞台監督 | 矢島健 |
舞台美術 | 田中敏恵 |
大道具制作 | 夢工房 |
映像 | 冨田中里(Selfimage Produkts) |
小道具 | 大橋路代(パワープラトン) |
衣裳 | 金子千尋 |
写真撮影 | 曳野若菜 |
チラシイラスト | 桔川伸 |
宣伝美術 | two minute warning |
制作 | 木下京子 |
広報 | 石井裕太 |
運営 | 山田恵理子(Y.e.P) |
企画・製作 | ポツドール |
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