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May 12, 2008

風琴工房「hg」

風琴工房
11-May-2008 15:00~17:00 D-1
ザ・スズナリ

Corich公演情報

080511a

 水俣病というと、学校の社会科の授業で習った公害病としての水俣病と、時折、認定・裁判等メディアで報道される程度の知識しかなく、第2話で描かれた「みかんの家」(ほっとはうす)のような胎児性水俣病患者の支援施設・支援団体の存在は今回「hg」を観てはじめて知りました。
 恥ずかしながら、水俣病に限らず公害病に関しては、その因果関係・責任の所在が明らかになった時点で、自分のなかでは勝手に過去の出来事として片付けているようなところがありました。けれど、終わっていないのですよね。

 第一話「猫の庭」は、チッソ社内の報告会の様子。
 皆、排水に原因があると疑いながらも、知らない振りをし、事実を隠蔽しようとする者。事実の解明と社員としての立場の板ばさみにあう者。
 舞台は1959年ですが、最近の食品関係の不祥事に重なり現代の出来事のようなリアル感。

 "父親が大工で水俣病の疑いがある"という女子社員。会議終了後、部屋を片付けながら、医師細田に「とうちゃんに高校に行かせてもらって、おかげでチッソにも入ることができた」というくだりは、緊迫した会議の後だけに、心にしみました。

 そして第ニ話「温もりのいえ」2008年の現在へ。

 舞台転換の間、劇作家役の女性が、第一話の登場人物のその後を語ります。場面は1959年から2008年と飛んでいるのですが、この語りがうまいことその橋渡しになってますね。
 語りを聞きながら、第一話の椅子と机と黒板だけの寒々しい舞台が、「みかんのいえ」の暖かい雰囲気の部屋に変わっていく様子を見ていたら、不思議と涙が出てきました。(49年間の時代の流れが一気に押し寄せたからか、それとも「みかんのいえ」に希望が見えたからなのか、自分でもよくわかりませんが)

 第ニ話「温もりの家」は、ある劇作家が、水俣病を舞台化するために"みかんのいえ"を取材にきたという設定で、作・演出詩森ろばさんの取材記を、そのままセミドキュメンタリの形で描いているようですね。
 劇中で、"みかんのいえ"の理事長と劇作家の間で「ドキュメンタリーではなく、なぜ演劇なのか」という論議がありましたが、それは、"ドキュメンタリー"でなく"演劇"を観ている観客に対してもかなり挑戦的な一言だったと思います。
 とても印象的だったのが、全員が和気あいあいと作業をする場面で、理事長の目がとても冷静に彼らの様子を見ていたこと。
ドキュメンタリーは画面に切り出されたものしか見えませんが、演劇では、その場を全て描くことができ、観客は全てを同時に見ることができます。ドキュメンタリであれば、作業者と理事長を同じ画面で見ることは不可能だったんじゃないかと思います。
 個々を克明に伝えるのはドキュメンタリーに軍配があがるでしょうが、場の空気をありのままに伝えるには、演劇は最適な手段なのかもしれません。

 胎児性水俣病患者を演じた役者さんにも、演じさせた詩森さんにも拍手。余計な脚色をせず、ありのままに伝えようとしているのが成功していると思いました。

 劇作家役の女性を、あきらかに水俣病発生当時に生まれていない若者に設定したのも正解と思います。

 第一話、女子社員の靴下の折り返しがなんだか懐かしい。ゴムの緩み具合も妙にリアルで1959年っぽい。

 舞台前方下手と上手にある日本の細い棒は水銀柱を模しているのかな。

第一話「猫の庭」
細田一郎(チッソ付属病院院長) 佐藤誓
西川栄治(チッソ水俣工場工場長) 篠塚祥司
徳山寛治(チッソ水俣工場技術部長) 栗原茂(流山児☆事務所)
小澤照之(チッソ付属病院医師) 金替康博(MONO)
石渡俊一(チッソ水俣工場総務部員) 浅倉洋介
古浦美智子(チッソ水俣工場総務部員) 津田湘子
桑原早苗(チッソ水俣工場総務部員) 海原美帆
遊佐聡(チッソ水俣工場総務部員) 山ノ井史
敷島隆(チッソ付属病院 猫飼育係) 北川義彦
第二話「温もりの家」
高城ふみ子(「みかんのいえ」理事長) 西山水木(La compagnie an)
国東茜(「みかんのいえ」に来る劇作家) 宮嶋美子
川合洋治(「みかんのいえ」職員) 金替康博(MONO)
新原妙子(「みかんのいえ」職員) 海原美帆
須藤明美(「みかんのいえ」職員) 笹野鈴々音
古倉正一(胎児性水俣病患者) 佐藤誓
楠本滋(胎児性水俣病患者) 篠塚祥司
森山春江(胎児性水俣病患者) 松岡洋子
窪田亮司(胎児性水俣病患者) 栗原茂(流山児☆事務所)
石沢雄太(自閉症の青年) 山ノ井史
神保耕平(「みかんのいえ」実習生) 北川義彦
楠本侑子(滋の孫) 津田湘子
小岩井弘樹(袋小学校教師) 浅倉洋介
 
作・演出・衣装・宣伝美術 詩森ろば
舞台美術 杉山至+鴉屋
照明プラン 榊美香(I's)
音響プラン 青木タクヘイ
音響オペ 鈴木実枝子
舞台監督 小野八着(jet stream)
スチール 鏡田伸幸
演出助手 渡邉真二
制作 田中真実
企画・製作 ウィンディ・ハープ・オフィス

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