黒色綺譚カナリア派「音楽劇『雨を乞わぬ人』」
黒色綺譚カナリア派
24-Jan-2010 16:00~18:20
中野ザ・ポケット
「音楽劇とミュージカルはどう違うのか?」とはよくある質問ですが、その答えはさまざまで、ググッってみたところ
・和製のミュージカル=音楽劇
・踊りがあるものがミュージカル、踊りのないものが音楽劇
・ショー的なものがミュージカル、芝居が中心のものが音楽劇
など、人によって回答はさまざま。
で、いちばん言いえて妙だなと思ったのは、いのうえひでのり氏の見解で、
「歌が無くてもストーリーがわかるものが音楽劇、歌がないと芝居が成り立たないのがミュージカル」というものでした。
さて、「雨を乞わぬ人」、いのうえ氏の判断基準を用いれば、確かに音楽劇です。
登場人物がおもむろにマイクを取り出して歌いだします。マイクを持つというのは、「これから歌で私の気持ちを表現します」と宣言しているのでしょうね。
ただ、元子の慈雨の会話だけはマイクを用いず歌でのやりとり、いわゆるミュージカル的演出(歌=セリフ)の場面となっていました。ミュージカルファンとしてはうれしい場面であったのですが、異質な感じも無きにしもあらずでした。音楽劇と称するなら、全部ハンドマイクで統一したほうがよかったのでは。
お話は、閉鎖的な村の巫女信仰を題材にしたもの。黒色綺譚カナリア派というとアングラ劇団と言われるけれど、題材がアングラなだけで、実は耽美でファンタジックなのが持ち味なんじゃないかと思ってます。
今回の題材ならば、忌まわしい習慣・怨念・一族の殺し合い・滅亡...なんてドロドロの展開も可能でしょうが、そうせずに、静かに滅んでいく結末にしたのは、いかにも黒色綺譚カナリア派。
先代の巫女"外待"は自分の娘を残して自決しましたが、慈雨は身ごもったまま、泣いて村を水没させ命を絶ちます。このラストシーン、心情的にはファンタジックで切ないですが、同時に大洪水ですべてが流れてしまうのは爽快でもありますね。本水のかわりに、あれは発砲スチロールの玉かな?を大量に落としてました。照明でちゃんと水に見えましたし、床にあたった音が響くので、音響的には本水よりも効果的かもしれませんね。
物足りない点。登場人物が多かったためか、個々の心の葛藤の描写が不十分に感じました。巫女と豪雨・翠雨・平太の話にしぼって、もっと心の闇を深く描いて、見せてほしかったなと思います。
ただ、もし、音楽劇ではなくミュージカルにしたならば音楽で個々の心情を一瞬で表現することも可能になったのではないかとも思います。
・牛水嬢、さすがの存在感。
・中里嬢のミュージカルシーンに大満足。
・赤澤さん、マジで憑依系の巫女さんっぽい。
・山下嬢、羽織姿が妙に似合う。ちょっと萌えた。
・男衆の帯の結び目、センターにもってくるとかっこ悪い。
・桑原氏、歌の上手い下手と、歌の説得力は無関係であることを教えてくれた。
天治慈雨(じう) 天治家の蔵に監禁される巫女は初潮を迎えて早三年 | 牛水里美 |
松本元子(もとこ) 東京の女子大生は歯にもの着せぬ主張がお好き | 中里順子 |
天治豪雨(ごうう) 天治家の主は座して逸るのは激しい恋煩い | 沖田乱 |
天治翠雨(すいう) 天治家の長男の芯は柔らかく | 眞藤ヒロシ |
天治甘雨(かんう) 天治家の次男の芯は冷え切った | 桑原勝行 |
天治瓜子(うりこ) 天治家の女中かと思えば正妻 | 中村真季子 |
天治瑞雨(ずいう) 瓜子の娘は父親を父とも呼べぬ日陰者 | 佐藤みゆき |
天治外待(ほまち) 先代の巫女は自決した | 赤澤ムック |
千田平太(へいた) 軟禁された間男は豪雨の酒の肴に | 板垣雄亮 |
寄川和夫(かずお) 元子の恋人の脆弱さは潔さ | 芝原弘 |
寄川節子(せつこ) 和夫の姉は優しい顔をした事なかれの保守派 | 山下恵 |
狐(きつね) 身の置き所なき村民は蝙蝠のごとし | 升ノゾミ |
半田昭一(しょういち) 天治村の青年団代表は要領を得ている | 町田彦衛 |
嶋野江哲也(てつや) 二枚目村民は巫女との性交を強要される | 立元竜生 |
東崎佳代(かよ) 力無き村民は恋人の不貞を見せつけられる | 宍戸裕美 |
草太郎(くさたろう) 性別をもたぬ青年は巫女の愛玩具 | 星耕介 |
割石勲(いさむ) 手負いの大人は付かず離れずの距離を保つ | 馬場巧 |
臼井浩二(うすい) 民俗学研究者は早口で村の居候 | 堀池直毅 |
作、演出 | 赤澤ムック |
音楽 | 和田俊輔(デス電所) |
舞台監督 | 中村貴彦 |
美術 | 吉野章弘 |
照明 | 奥田賢太(オフィスダミアン) |
音響 | 中村義宏 |
振付 | ストウミキコ(キリコラージュ) |
票券管理 | 堀内淳 |
当日運営 | 塩田友克 |
演出助手 | 小松明人 |
ビデオ撮影 | テアトルプラトー |
宣伝写真 | 引地信彦 |
宣伝美術 | 富田中里(SelfimageProdukts) |
制作 | 黒色綺譚文鳥派/RIDEOUT |
企画製作 | 黒色綺譚カナリア派 |
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