宝塚歌劇団「ハプスブルクの宝剣」
宝塚歌劇団
14-Feb-2010 15:30~18:30
東京宝塚劇場
詳しい内容はこちらで(STAGE GRAPH)
原作、藤木ひとみ著「ハプスブルク家の宝剣」
ハプスブルク家のマリア・テレジアの治世、「ハプスブルク家の宝剣」と呼び慣わされた、隻眼のユダヤ青年の冒険譚。
ただし、舞台では拷問で左眼を失うくだりは割愛され、従って、"隻眼"ではありません。隻眼のヒーローというのも見てみたいですけれどね。
ユダヤ系ドイツ人、エリヤーフーはイタリア留学中、ヘブライ語の読めないドイツ人のために、経典のドイツ語訳を作成しますが、紙に書かれた訳本は受けいられず(ユダヤの経典は羊皮紙に書かねばならない)、神を背く行為とされ、村から追い出されてしまいます。そしてアーリア人の恋人アーデルハイトをめぐる決闘で相手を殺してしまう。その恨みから追われる立場となったアリアーフーは、ロートリンゲン公国のフランツ・シュテファン(マリアテレジアの夫)に助けられ、ユダヤ人を捨てエドゥアルト・オーソヴィルとしてオーストリアで生きる決意をします。
軍人としてめざましい活躍をし、「ハプルブルクの宝剣」と呼ばれるに至るのですが、ユダヤ人であることが知れるにつれオーストリアでの居場所は無くなります。そしてプロイセンの闘いで危うく命を失いかけたところをユダヤ系ドイツ人に助けられる。そこでユダヤ経典のドイツ語訳本を見つけます。自分のドイツ語訳本が、ヘブライ語の読めないユダヤ人のために役立っている様子を見て、自分の本来の居場所をやっとみつけたエリアーフー。
フランクフルトに戻ったエリアーフーは、懐かしいエーデルハイトと再開するのでした。幕。
上下巻におよぶ長編大河ドラマを1時間半の舞台にしているので、駆け足感は否めません。「ハプルブルクの宝剣」を呼ばれるに至る活躍をフランツの説明セリフで済ましてしるのは、上演時間の制限で仕方がないとは百も承知ですが、ちょいと物足りない。
ラストシーンは、橋の上でエリアーフーとエーデルハイトが再開し、これから抱き合うのかな~と思ったところで幕。なんか「宮戸川」の「これから先は本が破けていてわかりません」的で小憎たらしい終わり方ではありますね。
アリアーフー改めエドゥアルトとマリア・テレジアの二人きりの場面のエドゥアルトの口説き、彼がユダヤ人と知ったあとのマリア・テレジアのツンデレぶりは宝塚的にはおいしいところですが、場面としては少ないです。宝塚観劇系の掲示板やブログを見ていると、一人の男の人生ドラマよりも男女の恋愛ドラマをたっぷりみたいという宝塚ファンには、本作品の評判は、あまりよくないっぽい。
反面、主役の柚木礼音が、出ずっぱり・熱く歌いまくりなので、柚木ファンにはたまらない作品かもしれません。
音楽、リーヴァイ氏の主題歌と甲斐先生による重厚なコーラスが秀逸。歌でセリフのやりとりをする場面が多く、ミュージカル的満足度は高いです。しかし、各ブログ・掲示板を見ていると、歌によるセリフのやり取りが苦手な方も多くいるようです。「歌だとセリフが頭に入ってこない」という理由を結構見かけます。歌は、つい聞き流してしまいがちですから、複雑なセリフは歌向きではないですもんね。本作の歌詞はわかりやすいと思うんですけどね。
夢咲ねね、アーデルハイドの先進ぷり(ユダヤ人の恋人をもつアーリア人)、マリア・テレジアの高貴な美しさが素敵。これで歌がもう少し上手ければ天下無敵の娘役だと思います。いま、五組中で姫役が合うのって、夢咲ねねだけじゃなかろうか。
英真なおき組長はエリアーフーの父親役。泣かせる歌声。ツボをついてくる。
植田景子先生の作品というと、中身が無い・薄っぺらと、なんか酷評されることが多いですが、自分的には、そういう作品ほど、面白くて楽しめた作品であることが多いです。自分は、重厚な作品よりも何度見ても楽しめるエンタメ系の作品が好きだからかか、セリフ劇よりもミュージカルやショーが好きだからか、それとも男女の感性の違いがあるのか(って、男女で二元論的に語るのはいかがなものかとはおもうけれど)。
以上、「ハプスブルクの宝剣」は、自分的にはかなり満足なミュージカル作品でした。とにかく音楽がよい。ぜひ2幕モノとして再演して欲しいと、切に思います。
蛇足
東京宝塚劇場。数年前に比べると男性客が増えました。奥さんの御供や団体客の男性は昔も居ましたが、男同士の客が目に付くようになりました。「逆転裁判」等のコラボ企画の成功で、男性客を獲得に成功したってことかな?
エリヤーフー・ロートシルト エドゥアルト・フォン・オーソヴィル | 柚希 礼音 |
アーデルハイト テレーゼ(マリア・テレジア) | 夢咲 ねね |
フランツ・シュテファン | 凰稀 かなめ |
フクス伯爵夫人 | 京 三紗 |
サヴォイア公子オイゲン | 一樹 千尋 |
モシェ・ロートシルト | 英真 なおき |
サラ | 万里 柚美 |
皇帝カール6世 | にしき 愛 |
ズィンツェンドルフ伯爵 | 美稀 千種 |
リディア | 百花 沙里 |
ジャカン | 涼 紫央 |
ドロテーア | 琴 まりえ |
ハラッハ | 美城 れん |
シュタレムベルク | 天霧 真世 |
フンク夫人 | 梅園 紗千 |
ラディック・ジリンスキ | 彩海 早矢 |
ヨハン・ゲオルク・フンク | 天緒 圭花 |
ラビ・ダウィド バルテンシュタイン | 鶴美 舞夕 |
グレゴール・バチャーニ | 夢乃 聖夏 |
ヘッセン・カッセル方伯 ケーニヒスエック将軍 | 水輝 涼 |
アンドラーシュ・オルツィ | 紅 ゆずる |
ヤコブ | 碧海 りま |
モーリッツ | 壱城 あずさ |
アムシェル・モシェ | 美弥 るりか |
ズィーゲル | 如月 蓮 |
キンスキー侯爵 | 汐月 しゅう |
アブラハム | 天寿 光希 |
オルガ | 稀鳥 まりや |
ユーゼフ 特使 | 大輝 真琴 |
マリア・アンナ | 音波 みのり |
カール・アレクサンダー・フォン・ロートリンゲン | 真風 涼帆 |
待従長ヨハン | 夏樹 れい |
ゲオルク・カイト | 十碧 れいや |
急使 | 漣 レイラ |
サムソン | 麻央 侑希 |
原作 | 藤木ひとみ |
脚本、演出 | 植田景子 |
作曲、編曲 | 甲斐正人 |
主題曲作曲 | シルヴェスター・リーヴァイ |
音楽指揮 | 御崎恵 |
振付 | 麻咲梨乃 御織ゆみ乃 |
ファイティング・コーディネーター | 渥美 博 |
装置 | 新宮有紀 |
衣装 | 有村 淳 |
照明 | 氷谷信雄 |
音響 | 渋谷 博 |
小道具 | 石橋清利 |
歌唱指導 | 楊 淑美 |
演出助手 | 野口幸作 |
舞台進行 | 宮脇 学 |
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