宝塚歌劇団「バウ人情噺「雪景色」」
宝塚歌劇団
6-Dec-2009 15:00~17:35 1F-P-33
日本青年館

バウ人情噺
『雪景色』
作・演出/谷正純
【第一幕】 『愛ふたつ』
【第二幕】 『花かんざし』
【第三幕】 『夢のなごり』
落語シリーズの第4弾。落語ネタは第一幕の「愛ふたつ」に、人情芝居「花かんざし」人情芝居、舞踏劇「夢のなごり」が加わり、まるで歌舞伎座の公演のような趣き。二幕と三幕は連続上演でしたが、幕間の休憩をつくったら、それこそ歌舞伎公演になります。女子トイレ混雑緩和、物販・主催チケット拡販のためにも、2回休憩にした方がよかったんじゃないかと思ったりして。
【第一幕】 『愛ふたつ』
元ネタは「小間物屋政談」+「幽霊の辻」(鈴鹿山での小四郎と茶店の婆のくだり)。
大凪真生の茶屋の婆ァが出色の出来。最初は「えっ、誰、この新感線の村木よしこさんみたいなひと!?」、一幕終了後に速攻でプログラムで確認したところ大凪真生とありました。こんな芸達者さんだったとは...今まで彼女をノーチェックだった自分が恥ずかしい。
舞羽美海、プロローグの総踊りの場面では、日本髪があまり似合っていないのが気になったけれど(顔立ちがはっきりしすぎているのと、メイクも研究の余地がありそう)、芝居が始まると"お咲"のキャラに見事にはまっていて、お顔と日本髪の不釣合い自体もキャラに思えてきました。対する浪江は、大店の未亡人で、話の上ではお咲の上をゆくいい女の設定ですが、大月さゆ自身日本髪がよく似合っていたし、品格も十分でした。
お咲との婚礼を控え舞い上がっている三五郎が、燗を呑み酔っ払ってゆく場面は、「たらちめ」「不動坊」などにある、婚礼を前に一人で盛り上がる場面からの引用でしょう。早霧せいな扮する三五郎の暴走っぷりに大笑い。
早合点大家は落語シリーズの常連、汝鳥 伶。今回は、この人の早合点が騒動の原因であり、影の主役といってよいでしょう。絶妙の可笑しさでした。
飛鳥裕は、前回の大劇場公演は休演していたので、ひさしぶりに拝見しました。最後のお白洲の場面だけでしたが、お奉行様の貫禄、存在感ともに十分、さすが組長さん。
幽霊の小糸、丸顔で愛嬌があり、いかにも落語に出てきそうな生命力あふれる幽霊でした。透水さらさが好演。「お菊の皿」で肥えて血色のよくなったお菊ちゃんって、あんな感じなんだろうな。
【第二幕】 『花かんざし』
新国劇風の人情芝居。しっとりと泣かせてくれます。
店の金に手をつけたために江戸所払いになった簪職人の伊佐治が渡し船を待っていると、岡引の吉蔵はじめ、幼馴染の連中がやってくる。真実は、妹の許婚である弟分が病気の母親の薬を買うために盗んだのだが、妹の幸せにためにその罪をかぶり、江戸を去ろうとする伊佐治。伊佐治に恋する主の娘・お菊。すべての事情を知ってか知らずか主の温かいはからいもあり、涙ながらに伊佐治は江戸を去ってゆく。
谷先生オリジナルかどうかはよくわかりませんが、どこかに元ネタがありそうな気もします。
一幕モノだからか、事件・伊佐治の過去についての吉蔵の説明ゼリフが多い。吉蔵は沙央くらまでしたが、長いとはいえ、説明ゼリフで噛んでいたのはいただけません。
船頭の源助は、年はとっているが新米の船頭で、三度にニ度は船をひっくり返すという、徳三郎みたいな船頭さん。
船宿の若女将(かな?)、お静(大月さゆ)、名入りの羽織(半纏だったか?)がよく似合ってました(個人的に羽織女子萌えなのだ)。
【第三幕】 『夢のなごり』
歌舞伎で源平の世界は、滅び行く平家の侍の悲劇と相場が決まっていますが、「夢のなごり」は、まさに平家残党の悲劇の舞踏劇。白鷺の群れを源氏のかかげる白旗と勘違いした平家の残党が死を選ぶと言う話。平家落人伝説の「しらさぎの悲劇」が元になっています。
冒頭、鎌を片手にかどわかされた娘を探す庄屋が登場。これは「愛ふたつ」で茶店の婆が語った「首無し地蔵」由来の話、なるほいど、源平時代の実話だったいう趣向。しかし茶店の婆が語った話では、「娘が悪党にたぶらかされてボロボロになって...」とあったが、実話は、どうやら若い男女の駆け落ちのよう。平家の落人伝説と入り混じってオカルトじみた話として後世に語り継がれたようですね。
宝塚的に言うと、和物のショーの一場面の趣き。一幕目の「愛ふたつ」とは真逆の幻想的な舞踏劇でした。
そしてエピローグでは、冒頭と同じ、陽気な総踊りとなります。
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落語を題材にした映画や芝居は数多ありますが、落語的な面白さは元の落語におよばないケースが多いと思います。新劇というのは理性と人の持つ業との鬩ぎ合いをドラマにすることが多いですが、「落語とは業の肯定である」というように、鬩ぎ合いの向こうを描いている世界。芝居化すると、どうしても鬩ぎ合いのドラマの要素がはいってきてしまい、その分"業の肯定"のおもしろさが減ってゆくように思います。
じゃあ、宝塚はどうかというと、リアルな芝居よりも荒唐無稽な世界(夢の世界ともいう)を描くことに長けた劇団であり、理論的には破綻した物語を極上のエンタテイメントに仕立て上げてしまう力をもった稀有な集団だと思います。だから、新劇的世界を飛び越えて、落語の非日常的な"業の肯定"の世界へと容易に飛んでいけるのだと思うです。
落語ネタは桂枝雀の音源が生徒さんたちの参考書として出回っているようで、ところどころ枝雀師匠の仕草・言い回しが見受けられます。落語ファンにとってはうれしいポイントかも。
| 【第一幕】 『愛ふたつ』 | |
| 小四郎 | 沙央 くらま |
| 三五郎 | 早霧 せいな |
| 甚兵衛 | 汝鳥 伶 |
| 佐々木信濃守 | 飛鳥 裕 |
| 茶屋の婆ァ | 大凪 真生 |
| 浪江 | 大月 さゆ |
| 伊勢屋 | 香綾 しずる |
| お熊 | 此花 いの莉 |
| 杢兵衛 | 透真 かずき |
| うどん屋 | 詩風 翠 |
| 幽霊の小糸 | 透水 さらさ |
| 喜六 | 凛城 きら |
| 米やん | 彩風 咲奈 |
| お咲 | 舞羽 美海 |
| 清八 | 帆風 成海 |
| 【第二幕】 『花かんざし』 | |
| 伊左次 | 早霧 せいな |
| 吉蔵 | 沙央 くらま |
| 源助 | 汝鳥 伶 |
| 弥次郎兵衛 | 大凪 真生 |
| お静 | 大月 さゆ |
| 喜多八 | 香綾 しずる |
| お染 | 千風 カレン |
| お品 | 悠月 れな |
| おきわ | 此花 いの莉 |
| 庄助 | 透真 かずき |
| 甚六 | 央雅 光希 |
| お市 | 透水 さらさ |
| 巳之助 | 彩風 咲奈 |
| お菊 | 舞羽 美海 |
| 【第三幕】 『夢のなごり』 | |
| 伊予三郎忠嗣 | 早霧 せいな |
| 伊予四郎信嗣 | 沙央 くらま |
| 門脇刑部太夫 | 汝鳥 伶 |
| 太郎兵衛 | 飛鳥 裕 |
| 阿波次郎景季 | 大凪 真生 |
| 柚木 | 大月 さゆ |
| 朽木源左衛門 | 香綾 しずる |
| 平有盛 | 凛城 きら |
| 藤太 | 真那 春人 |
| 伊予八郎直嗣 | 帆風 成海 |
| 常磐木姫 | 舞羽 美海 |
| お雪 | 妃桜 ほのり |












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